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NSAIDs過敏喘息(アスピリン喘息)について~喘息の方が解熱鎮痛剤に注意する理由とは~

[2024.08.27]

NSAIDs過敏喘息とは?

NSAIDs過敏喘息とは、アスピリンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を摂取した際に引き起こされる喘息の一種です。過去にアスピリン喘息とさわれておりましたが、近年NSAIDs過敏喘息(Aspirin-exacerbated respiratory disease:AERD)と国際的に呼ばれております。アスピリンやNSAIDsを摂取した後、数分から数時間以内に呼吸困難や咳などの喘息発作の症状が現れます。喘息の方の7%に見られると言われています。
NSAIDs過敏喘息は鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎を合併することが多く、鼻閉や鼻炎などを伴うことが多いです。

年齢や性別に差はあるの?

NSAIDs過敏喘息は、成人期に発症することが多く、30代~50代に多く見られます。小児や若年者においては比較的少なく、成人になってからアスピリンやNSAIDsを使用機会の増加が影響していると考えられています。また、一般的に女性に多く見られる傾向があります。

原因は?

アスピリンやNSAIDsは、シクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素を阻害します。これによりプロスタグランジンという、炎症に関わる物質の合成を抑えるため、解熱や鎮痛が得られます。しかし、同時にロイコトリエンという物質の合成が増加します。ロイコトリエンは、気道の収縮や炎症を引き起こすため、喘息症状が悪化します。加えて元々アレルギー疾患を持つ方は、好酸球や肥満細胞の活性化により、これらの細胞から放出される炎症性物質が鼻腔と気道の炎症を悪化させます。
また遺伝的要因の関与も示唆されています。

どのような対策をとればいいか?

診断を受けた場合、アスピリンやNSAIDsの使用回避が重要になります。解熱鎮痛剤として市販薬や診療所で使用されることが多く、注意が必要です。
上記の代替薬として、解熱鎮痛目的にアセトアミノフェン(カロナールなど)が使用されます。通常では成人に対し1回500mg、4-6時間ごとに服用し、総量1日4000mgを超えないよう使用されます。しかしNSAIDs過敏喘息の方はアセトアミノフェンでも発作を起こすリスクがあるため、1回量を300mg以下に抑えたほうが望ましいとされています。
食事により症状を予防できる可能性もあります。NSAIDs過敏喘息の方は少量のアルコール摂取で鼻や気管支症状を訴えることが多く、アルコールの摂取を控えたほうが望ましいです。またオメガ6脂肪酸を含む食品の摂取量が多いと、体内で代謝され、ロイコトリエンの合成が増加し、症状が増悪すると考えられております。オメガ6脂肪酸の摂取を減らし、代わりにオメガ3脂肪酸の摂取を増やしたところ、気道症状が大幅に改善したとの報告がございます。

喘息持ちですが、NSAIDsをよく飲みます。大丈夫でしょうか?

喘息の方全てがNSAIDs過敏喘息ではなく、7%程度の有病率です。そのため、今までNSAIDsを飲んでも問題なかった方もいらっしゃいます。しかし、個人差があり、NSAIDs過敏喘息は個々の体質やアレルギーの状態によって異なります。過去に問題がなくとも、体調や免疫系の変化により、将来的に発症する可能性はあります。使用に関しては医師にご相談ください。

喘息持ちですが、アセトアミノフェンが効かないのでNSAIDsを飲みたいです。どうしたらいいでしょうか?

NSAIDsを希望される方はセレコキシブを推奨します。これは、COX-2阻害薬というタイプのNSAIDsで、COX-1阻害をほとんど行わないため、ロイコトリエンの合成量が抑えられます。NSAIDs過敏喘息の方に比較的安全であると考えられています。ですが、個人差があるため、使用の際には医師にご相談ください。

参考文献
  • Hannah Wangberg, Aspirin-exacerbated respiratory disease, Curr Opin Immunol. 2020:66:9-13.
  • 喘息予防・管理ガイドライン2021(日本アレルギー学会喘息ガ5 イドライン専門部会、2021)
  • Tanya M Laidlaw, Clinical updates in aspirin-exacerbated respiratory disease. Allergy Asthma Proc. 2019;40(1):4-6.
  • doi: 10.2500/aap.2019.40.4188.
  • Donald D Stevenson, Aspirin and NSAID sensitivity, Immunol Allergy Clin North Am.2004 24(3):491-505.

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