雨の日だから喘息が悪くなる?雷雨喘息について
「雨の日だから、今日はいつもより息苦しい」
よく喘息の方がこのようなことを話されます。特に雨の多い梅雨や台風の時期は、喘息が悪くなりやすいと言われています。
なぜこのように天気に左右されてしまうのか、詳しく解説していきます。
→喘息に関してはこちら
→梅雨の喘息悪化についてはこちらでも解説しております
なぜ雨の日に悪化するのか?
実は、喘息と気候に関しては一貫したデータは得られておりません。まだわからないことが多いというのが現状です。
気圧の低下が喘息悪化の原因になるという報告もあれば、気圧、降雨量、湿度は関係なく、気温の低下のみが関係しているといった報告もあります。
低気圧で喘息が悪化する理由は2つ考えられております。
1つは、喘息の悪化の原因となるアレルゲンや大気汚染物質は、気圧が低いと濃縮され、空気中に留まるためです。すぐには拡がっていかないため、吸入しやすくなり、喘息が悪化いたします。
もう1つは、呼吸回数が増えるためです。低気圧は空気が薄くなり、酸素分圧が下がるため、呼吸回数が増し、その分アレルゲン物質を吸入しやすくなります。
低気圧では天気が曇りや雨になりやすいため、雨の日に症状が起こりやすいと考えられます。
ただし、降雨は空気中の花粉などのアレルゲン物質を除去するとも考えられているので、やはり一貫して雨の日=喘息が悪化する、とは言い難いと思います。
梅雨ではなぜ喘息が悪化するのか?
梅雨は天気が崩れやすく、雨が降りやすい時期です。
梅雨の喘息悪化は低気圧に加え、ダニ、カビなどのアレルゲンの増加が原因と考えられております。
梅雨の喘息悪化についてはこちらの記事でも解説しておりますので、併せてご参照ください。
台風ではなぜ喘息が悪化するのか? 雷雨喘息について
台風やスコールなどで発生する雷雨は喘息悪化の要因の一つです。これを雷雨喘息と呼びます。
この増悪の機序として考えられているのが、花粉粒子の破裂です。
乾燥した上昇気流が花粉全体を雲底まで運び、そこで花粉が破裂します。その後、冷たい下降気流が花粉の破片を地表まで運びます。花粉の破片は、普段よりも小さな粒子であるため、より気道の奥まで吸い込みやすくなり、喘息を悪化させやすい、と考えられています。
実際に雷雨後に、空気中に破裂した花粉の粒子が大幅に上昇した報告がございます。
対策方法はあるか?
低気圧や雷雨の際は空気中にアレルゲンが留まりやすいため、症状が悪化しやすい場合は、不要な外出を控え、暴露を避けることが対策になります。
しかし、通勤や通学で完全に外出しないというのは難しいでしょう。
症状が改善したら吸入をやめてしまうのではなく、低気圧でも悪化しないよう、普段からの吸入ステロイドを継続していくことが、最も重要です。コントロールをしっかり行うことで、悪化自体を抑えることや悪化時の症状を和らげる事ができます。
またある程度、気圧によってご自身の症状悪化を予測できる場合、吸入量を一時的に増やすなどの治療強化で、悪化を予防できることがございます。
ただし、吸入薬の種類によっては吸入回数を増やせないタイプもございます。自己判断では増やさずに、必ず医師にご相談ください。
他にも気候と結びつけて、喘息悪化を予測するサイトやアプリケーションがございます。指標の一つとして参考にできますので、興味のある方は検索してみてください。
参考文献
- Jia Fu, Increased Risk of Hospital Admission for Asthma from Short-Term Exposure to Low Air Pressure. J Asthma Allergy. 2022;15:1035-1043.
- Gennaro D'Amato, Thunderstorm-related asthma attacks. J Allergy Clin Immunol. 2017 ;139:1786-1787.
- 喘息予防・管理ガイドライン2021(日本アレルギー学会喘息ガ5 イドライン専門部会、2021)