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運動誘発性喘息(アスリート喘息)とは?

[2024.08.29]

運動誘発性喘息とは?

運動誘発性喘息(exercise-induced asthma:EIA)とは、運動や激しい身体活動を行った後に、気道が一時的に収縮し、喘息症状が引き起こされる状態を指します。運動をされる方や、体を動かす仕事で問題になります。特にアスリートの方ではアスリートでない方よりも有病率が高いとされております。実際に、有病率はアスリート30~50%と高く、特に水泳、持久力競技、冬季スポーツはパフォーマンスに影響すると予想されます。早期の発見と診断、治療が重要です。

低リスク:5-8分未満の運動

例:短~中距離走、テニス、体操、格闘技、ゴルフ、重量挙げなど

中リスク:5-8分以上の継続的な運動が続かない

例:サッカー、ラグビー、バスケットボール、バレーボール、野球など

高リスク5-8分以上の継続的な運動、または環境要因(冷気、有害物質)が関与する運動

例:水泳、水球、マラソン、サイクリング、クロスカントリースキー、アイスホッケー、アイススケート、高地スポーツなど

症状は?

運動誘発性喘息は、運動開始数分後に以下の症状が現れます。

  • 咳: 運動後に頻繁に咳が出てしまう
  • 喘鳴: 「ゼーゼー」または「ヒューヒュー」と呼吸で音がする
  • 息切れ: 息苦しさや呼吸困難を感じる
  • 胸の圧迫感: 胸が締め付けられるような感じがする

要因とメカニズム

発症機序は複数あり、喘息の有無、スポーツの種類、トレーニング環境、遺伝など、様々な要因の影響を受けます。個人差もあり、パフォーマンスに影響を与えない程度の軽症な方もいれば、運動の継続ができないほど苦しむ重症な方もいます。
発症のメカニズムは運動時に生じる換気の増加により、大量の冷たい空気を吸うためと考えられております。乾燥した冷気は気道上皮刺激して炎症を起こさせ、気管支を収縮させるため、気道が狭くなってしまいます。他にも、気候、大気汚染、アレルゲンやプールの塩素系消毒剤など、環境要因が合わさることで、より症状が出現しやすくなります。

診断方法は?

呼吸機能検査が診断に有用ですが、アスリートの方は安静時の呼吸機能検査が正常であることが多く、診断が困難な場合がございます。その際は吸入負荷試験や運動負荷試験後の呼吸機能検査で異常を認めるか判断いたします。
※当院では負荷試験は行っておりません。

治療と予防方法は?

薬物療法と非薬物療法がございます。どちらも重要であり、併せて行っていく必要がございます。

薬物療法

  • 吸入ステロイド薬の定期吸入
  • 長時間作用型β刺激薬の吸入
  • 短時間作用型β刺激薬の吸入 : 運動15分前に使用、効果は4時間程度
  • ロイコトリエン受容体拮抗薬

なおアスリートは日本スポーツ協会に記載されているアンチ・ドーピングリストに記載されている薬剤であるか、確認を推奨いたします。

→日本スポーツ協会 アンチ・ドーピング

非薬物療法

  • 運動前のウォーミングアップ:
    理想的なウォームアップについてはコンセンサスはありませんが、一般的には10~15分間の体操やストレッチなどのウォームアップが推奨されています。最大心拍数の50%~60%程度の心拍数を目標にします。
    なお文献では高強度のインターバルウォームアップが効果的であったと報告されております。高強度のインターバルウォームアップとは、トレッドミルの最高速度(短時間で疲労困憊となる運動強度)で8回30秒のランニングを行い、各スプリントの間に45秒の回復時間を設ける方法です。
  • マスクの装着:冷気やアレルゲンの回避
  • 食事療法:ω3多価不飽和脂肪酸を多く含む食事、アスコルビン酸の補給(2週間で1日1500 mg)

参考文献

  • Stefano R Del Giacco, Exercise and asthma: an overview, Eur Clin Respir J. 2015:2:27984.
  • André Moreira, Exercise-induced asthma: why is it so frequent in Olympic athletes?  Expert Rev Respir Med. 2011;5(1):1-3.
  • Toshiyuki Koya, Management of Exercise-Induced Bronchoconstriction in Athletes, J Allergy Clin Immunol Pract. 2020;8(7):2183-2192.
  • Josuel Ora, Exercise-Induced Asthma: Managing Respiratory Issues in Athletes, J Funct Morphol Kinesiol. 2024;9(1):15.
  • T D Mickleborough, Comparative effects of a high-intensity interval warm-up and salbutamol on the bronchoconstrictor response to exercise in asthmatic athletes, Int J Sports Med, 2007 ;28(6):456-62.
  • 喘息予防・管理ガイドライン2021(日本アレルギー学会喘息ガ5 イドライン専門部会、2021)
  • 日本スポーツ協会:https://www.japan-sports.or.jp/medicine/doping/tabid537.html

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