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百日咳が流行しているようです

[2024.05.16]

百日咳が宮崎県で増えているようです。確かに宮崎県衛生環境研究所のデータを確認してみると4月に入ってからの報告例は増えており、注意喚起がでておりました。

イギリス医師会雑誌(BMJ)では昨年12月以来、欧州や中国でも増えていると報告しております。

日本は現在海外からの観光者が増えておりますので、海外からの感染が流行する可能性があります。

この記事では百日咳について、ご説明いたします。

1. 百日咳とは

百日咳は百日咳菌(Bordetella pertussis)、パラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)という細菌の感染症です。飛沫や接触感染により鼻咽頭や気道上皮に感染します。子供だけでなく、大人にも感染します。

2. 症状

名前の由来にある通り、長く持続する咳が特徴です。カタル期→痙咳期→回復期と3つの経過をたどります。

① カタル期

約2週間持続します。何も症状がない潜伏期間が約1週間継続します。潜伏期間が終わると風邪症状が出現し、徐々に咳が強まってきます。

② 痙咳期

約2-3週間継続します。咳の状態がカタル期と変化します。短い咳が連続的に起こり、咳の後に息を吸うとヒューと笛のような音が聞こえます。喘息は吐くときにヒューと音が聞こえるので、喘息とは異なります。このように発作を繰り返すことをレプリーゼといい、百日咳に特徴的な所見です。咳がひどい場合は嘔吐が出現することもあります。ですが、幼児以外ではこの症状があまり診られませんので、通常の風邪や感染後咳嗽として経過を診られていることもあるでしょう。

③ 回復期

激しい咳発作はなくなりますが、発作性の咳が2-3ヶ月間持続します。

3. 検査と診断

① 喀痰培養

Bordet-Gengou培地やcyclodextrin solid mediumなどの特殊な培地での検査が必要になります。ただし検出率は低く、症状の強い痙咳期に培養で診断つけることは難しいのが現状です。

② 遺伝子検査

咽頭拭いで行う、百日咳菌LAMP法(loop-mediated isothermal amplification)があります。コロナのPCR検査と同様です。培養検査よりも診断の感度は高く、結果は2-3日要します。

③ 抗体検査

抗百日咳毒素抗体(抗PT IgG)を用いて診断します。急性期と回復期の2度の採血が必要です。1回目の採血と、約2週間後に2回目の採血で、抗体価が上昇しているかで診断致します。
急性期(1回目)の採血で抗PT IgGが陽性であり、回復期(2回目)に2倍以上の有意上昇を認めた場合、百日咳と診断します。または1回目の採血で抗PT IgGの数値が100 EU/mL以上の高値の場合は、百日咳と診断します。
なお乳児で百日咳のワクチン接種歴がない場合、1回目の採血で10 EU/mL以上の場合は百日咳と診断します。

※国立感染症研究所 百日せきワクチン ファクトシートより引用

4. 治療・予防

マクロライド系の抗菌薬で治療します。エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンが該当します。
百日咳は予防の為、世界的にワクチン接種を推奨しております。日本では定期接種の4種混合ワクチンに百日咳が含まれており、生後3ヶ月から接種しております。ただしワクチンの免疫効果は4-12年で減弱するとされており、青年・成人の感染者も増えてきておりますので、青年・成人のワクチン追加接種が推奨しております。

5. 出席停止に関して(学校保健安全法)

出席停止期間の基準は『特有な咳が消失するまで、または五日間の適正な抗菌薬療法が終了するまで』と指定されております。5日間の適切な抗菌薬治療で感染の恐れがないと報告されており、上記の規定に改定されました。

6. マクロライド耐性百日咳菌(MBRP)について

マクロライドに耐性をもつ百日咳菌(macrolide-resistant Bordetella pertussis: MRBP)が出現しており、中国でアウトブレイクが報告されております。国立感染症研究所によると、日本でも報告例があります。今後海外から流入する可能性もあるため、注意が必要と考えます。

7. まとめ

百日咳は子供の疾患ではなく、大人でも感染する疾患です。ワクチンの追加接種や再感染の既往がない場合は、免疫効果が低下しているため、子供から感染してしまう可能性もあるでしょう。
長引く咳で疑わしいと思いましたら、一度医師にご相談ください。

参考

執筆:医師 関口 

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