気管支喘息(ぜんそく)について
気管支喘息(ぜんそく)とは
気管支喘息(ぜんそく)とは、アレルギーなどが原因となって気道に慢性的な炎症が起こり、咳、痰、息切れ、明け方に呼吸苦、喘息発作などの症状が起こる病気です。
気管支喘息の場合、炎症により気管支が狭くなり、ヒューヒュー、ゼイゼイといった笛のような呼吸音が聞こえます。
喘息というと子どもの病気というイメージがあるかもしれませんが、小児喘息を大人になるまで持ち越したり、大人になってから再発したりすることもあります。
また、子どもの頃に喘息がなかった人が、大人になってから発症するようなケースもあります。
気管支喘息のように笛のような呼吸音や呼吸困難を伴わないものの、2週間以上咳が続く、夜に咳がひどくなって眠れないなどの症状がある場合、咳喘息の可能性もあります。
気になる方は、呼吸器内科やアレルギー科を受診してみましょう。
「喘息ってどんな病気?」について、取材協力致しました。
症状
症状としては、咳、痰、息切れ、明け方に呼吸苦が出る場合が多く、気圧や気候の変化でも増悪します。
炎症により気管支が狭くなり、ヒューヒュー、ゼイゼイといった笛のような呼吸音が聞こえます。
原因
最も一般的な原因はアレルゲンという、アレルギーを起こす物質を吸入することです。
その結果、気管支に免疫反応が起こり、アレルギー性の炎症が生じます。
炎症が起きると気管支は狭くなり、笛のような音が聞こえます。
この他に、運動誘発性や寒冷刺激、解熱鎮痛剤、ミントや香辛料の香りなどで気管が狭くなることもあります。
診断
問診
- 今まで「ヒューヒューゼイゼイを繰り返してきたか」「アレルギー体質があるか」などを確認します。
- 「アレルゲンを吸う環境にあるか」(ペットの有無、粉じん暴露の環境、自宅はカビっぽいかなど)
- 「何をきっかけに症状が出たか」(風邪を引いた後、運動後、飲酒後、喫煙後など)
も重要な情報です。
また典型例では明け方に呼吸苦が出る場合が多く、気圧や気候の変化でも増悪します。
診察
聴診では笛様音を確認します。
喘息の発作が落ち着いている時には異常な呼吸音は聞こえません。
発作時には酸素飽和度を調べ、入院の適応を判断します。
肺機能検査
喘息が安定していない状態や後述のリモデリングが起きた場合などでは、息を吐く力が弱くなります。
肺機能検査を行い、この状態を評価します。
採血
鑑別診断や感染などの合併症の評価のために採血を行う場合があります。
また採血で様々な吸入アレルゲンに対する反応を調べることが出来ますが、採血上で陰性になるタイプの喘息もあります。
それらを総合的に判断していきます。
鑑別診断
他の喘息に似た症状が出るご病気(気管支炎、気管支拡張症、心不全、肺血栓塞栓症など沢山あります)を否定し、最終的に喘息と判断します。
治療
発作が起きないよう普段から使用する長期管理薬と発作時の治療に分かれます。
長期管理薬
- 吸入ステロイド薬
- 長時間作用型β-2刺激薬(気管支拡張薬) など
発作時
- 短時間作用型β-2刺激薬(気管支拡張薬)
- 内服、点滴ステロイド など
現在主流な治療薬は?
現在主流な治療薬は吸入ステロイド薬です。
発作時にはステロイドの内服や点滴が必要になることもありますが、これは全身投与であり長期的に続けると様々な副作用が出てきてしまいます。
一方吸入ステロイドは体内に入るステロイド量はごくごく少量であり気管支粘膜のみに働くため、少ない副作用で大きな効果を得ることが出来ます。
気管支が狭くなっている状態に対しては気管支拡張薬を使用します。
その他抗アレルギー剤や気管支拡張作用のある薬を組み合わせて、治療していきます。
症状が無くなっても、気道の炎症が完全に無くなっている訳ではありません。
急に治療を中断せず、徐々に減らして行くことが大切です。
肺機能検査などを参考にして治療のステップダウンをします。
リモデリングの予防のために
短時間作用型のβ-2刺激薬(気管支拡張薬)を吸入するとスッと楽になります。
苦しい時だけ気管支拡張薬を吸えば良いような気がしてしまいます。
しかしこれでは根本的な解決にならないどころか、将来的に肺の機能がとても低下します。
気管支が狭くなる→拡げるというサイクルを繰り返すと最終的に気管支が狭いままになってしまうのです。
これをリモデリングといいます。
リモデリングの予防のためにも、きちんと必要量の吸入ステロイドを使い、気道の炎症を抑え、気管支の収縮を最小限にとどめるようにしましょう。
吸入薬について
喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)で使用する吸入薬についてご説明します。飲み薬や塗り薬と違って身近ではない吸入薬、何だかとっつきにくく感じるかもしれません。
最近では吸入薬が増え、より患者さんそれぞれに合う吸入を選択出来るようになっています。当院では患者さんと相談しながら吸入薬を選択するのはもちろんですが、必要に応じて吸入指導も行いながら経過をみています。
吸入薬の種類
長期管理薬
吸入ステロイド
喘息治療の基本の薬。気管支の炎症を抑えます。内服や点滴の副腎皮質ステロイド薬と比較し副作用はほとんどなく、安全に使用出来ます。吸入ステロイド薬により、劇的に重症喘息の患者さんが減りました。毎日吸入することで効果を発揮しますので、ご自身の判断でやめず、リモデリングの予防のためにもきちんと継続することがとても大切です。上記リモデリングもご参照下さい。
例:フルタイド®、パルミコート®、オルベスコ®、アズマネックス®、キュバール®など
長時間作用性β-2刺激薬
気管支拡張薬です。発作の時に使用する速攻型の気管支拡張薬ではありません。毎日決められた量を吸入します。
例:セレベント®、オンブレス®など
長時間作用性抗コリン薬
気管支は平滑筋の作用により収縮します。気管支平滑筋は副交感神経が働き収縮するため、ここをブロックするのが抗コリン薬です。COPD、喘息で使用します。前立腺肥大症、緑内障、心疾患がある方は基本的に使用しません。
例:スピリーバ®、エンクラッセ®、シーブリ®、エクリラ®など
合剤について
これらの吸入は単剤だけでなく合剤があり、患者さんの重症度や合併症などによって決めます。
発作治療薬
あくまで発作時に緊急で使用する薬剤です。
1週間のうち何回も吸入しなくてはならないような場合には、炎症を抑える治療を強化しなくてはならないので早めにかかりつけの医療機関に受診しましょう。吸入しても治まらない強い発作の時には緊急受診が必要になります。
短時間作用性β-2刺激薬
例:メプチン®、サルタノール®、ベロテック®など
短時間作用性副交感神経遮断薬
例:アトロベント®
吸入薬の剤形について
DPI(ドライパウダー定量吸入器)
例:タービュヘイラー、ディスカス、エリプタ、ツイストヘラー、スイングヘラー、ディスクヘラー、ブリーズヘラー、クリックヘラー、ハンディヘラー
pMDI(加圧噴霧式定量吸入器)
例:エアゾール
SMI(ソフトミスト定量噴霧器)
例:レスピマット
<注意すべき点>
吸入に必要な流速が各デバイスで異なります。吸入が効いていないのではないかと思いきや、吸入速度や手技に問題がある場合もありますので、しっかり吸入指導を受けましょう。主治医や薬局に相談してみてください。
特に小児やご高齢の方は吸入する力が弱いので、デバイス選びは慎重に行います。エアゾールに吸入補助器を併用したり、ネブライザーが適していることもあります。
スペーサー
エアゾール製剤を取り付け、吸入しやすくします。オンラインでも購入出来ますし、薬局や医療機関で取り扱っていることもあります。何種類かありますが、年齢に適したものを選びましょう。
ネブライザー
ネブライザー用の薬液(ステロイド、気管支拡張薬など)を霧状にしてくれる機械です。吸い込む力が弱くても確実に吸入できるため、発作時、ご高齢の方、乳幼児に使用しやすいです。
ジェット式、超音波式、メッシュ式があります。ジェット式はどの吸入液でも使用出来ますが、メッシュ式では吸入ステロイド液の使用に適さないものもありますので、ご自宅用に購入する際にはご注意ください。
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