小児の日焼け
紫外線について
地球に届く紫外線には大きく分けてUVBとUVAがあります。
UVBは短波長(280-315nm)、UVAは長波長(315-400nm)で、波長の短いUVBはほとんどが大気圏(オゾン層など)で吸収されますが、一部は地表にまで届き、日焼けや皮膚癌の主な原因になります。
UVAはUVBに比べると影響は小さいですが、その多くが地表に届くため、長い時間当たると肌への影響が懸念されています。
海水浴などで強い紫外線を浴びて肌が赤く腫れ、時には痛みや水ぶくれを起こす(サンバーン:sunburn)ことがありますが、それはUVBが主な原因です。また、皮膚癌の原因となる紫外線も主にUVBと考えられています。一方、UVAは肌の色を黒くさせたり(サンタン:suntan)、しみなどの皮膚の老化を起こすと言われています。
日焼け止めの種類、選び方
日焼け止めはUVB、UVAをカットするものです。日焼け止めの主成分は紫外線散乱剤(酸化チタン、酸化亜鉛など)と、紫外線吸収剤(t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メトキシケイヒ酸オクチルなど)の大きく2種類に分けられます。紫外線吸収剤は皮膚に塗っても白くならない利点がありますが、アレルギーを起こし、かぶれることがあるため、子供用や敏感肌用のものは紫外線散乱剤のみを使用しているものが多いです。
UVBを防ぐ数値をSPF (sun protection factor)、UVAを防ぐ数値をPA (protection grade of UVA)といい、強さの指標になっています。適材適所で強さや耐水性なども含めて使い分けましょう。
- 日常生活:SPF 15〜20 PA++
- 短時間の外出:SPF 20〜30 PA++〜+++
- 海や山への外出、レジャー:SPF 30〜50 PA+++〜++++
お子さんに使う場合には日本で小児への日焼け止め製品の仕様試験が報告されているのは平均生後6ヶ月以降の乳児となります。
新生児や6ヶ月未満のお子様は紫外線の強い時間帯(10時〜14時)には外へ出さない、薄い長袖を着せたり、ベビーカーや帽子など覆いをする、などの対策をとりましょう。
日焼け止めの塗り方
日焼け止めは薄く塗りすぎると効果が低くなりますので、説明書にある使用量をしっかりと塗りましょう。また、汗などで効果は薄れてしまうため、2〜3時間毎に塗りなおしましょう。また、汗を拭いたらその度に付け直しましょう。帰宅後は一般的な石けんやボディーシャンプーで丁寧に洗えば落ちますが、その後の乾燥を防ぐために保湿を行ったほうが良いでしょう。
塗る順番は?
保湿剤など他の外用剤との使い方(塗る順番)としては、
①保湿薬(ステロイドなど外用薬も含む)
②日焼け止め
③虫除け剤の順番に使用しましょう。
上記のように紫外線は皮膚への障害をおこすものではありますが、唯一の人体に対する有益な作用として、「皮膚でのビタミンDの生合成」があります。
ビタミンD
ビタミンDは、腸管でのカルシウムの再吸収、骨への沈着を促し、骨の成長・維持に重要な成分です。ビタミンDが不足すると、食事でカルシウムを摂っても十分吸収されず、カルシウム不足に陥ります。
著しいカルシウム不足になると、けいれんなどの症状が起こるため、骨からカルシウムを溶かして供給するようになり、その結果、骨の強度が低下して、小児では「くる病」といった骨疾患、O・X脚といった骨の変形、歩き始めの遅延なども起こることがあります。
成人では骨軟化症の原因にもなります。
ビタミンDは皮膚において、紫外線(UVB)の働きで作られ、食事からも摂取できます。
ビタミンDを多く含む食品
- 魚類:鮭、いわし、さんま、サバ、しらすなど
- キノコ類:キクラゲや干しシイタケなど
しかし、必要量を食事だけから取るのは難しく、紫外線によるビタミンD生合成が必要とされます。
とはいっても、やけど状態になる程日光浴をする必要はなく、地域、季節や天候、時刻によって変動はありますが、おおよそ「夏期は15分から30分程度、冬季は1時間程度」がビタミンD生成のために推奨される日光照射時間とされています。
なお、日焼け止めを使用することで、ビタミンDの産生も低下することになりますが、皮膚への障害を考えると、ビタミンD生成のために、日焼け止め使用をやめる必要はありません。
しかし、妊娠中、授乳中の女性は注意が必要で、もともと母乳中にはビタミンDが少ないため、特に完全母乳栄養のお子さんの場合、お母さんの過剰な紫外線防御はお子さんのビタミンD不足をひきおこし、くる病や、カルシウム不足によるけいれんなどを起こしてしまうことがあります。
食事から摂取できるビタミンDの量も限られるため、日照時間が短い地域や季節では過剰な紫外線防御はせずに、必要に応じてサプリメントなどを取りいれても良いですね。
さいごに、乳児に対する「日光浴」に関しては、直射日光を避けた外気浴でもある程度は紫外線を浴びるため、敢えて直射日光に当てさせる必要はないと考えられており、過剰ではない紫外線防御をしつつ、ビタミンD生成とのバランスをとっていただくのが良いかと思います。
もっと詳しく紫外線について知りたい!という方は、環境省の紫外線環境保健マニュアル,2015をご参照ください。
当院はじめての方へ
当院には、小児科専門医、アレルギー専門医、呼吸器専門医、総合内科専門医、が在籍しています。
小児から大人への一貫したアレルギー診療が可能です。
高い専門性を有しながらも一般的な内科・小児科の診療も可能です。
在籍医師は育児中の女性医師です。ワクチン接種時や乳幼児健診や診察時など育児に関することもお気軽にご相談ください。
当院の受診方法は?
風邪をひいた、せきが長引く、便秘、肌がかさかさする、発熱、風邪(かぜ)、咳(せき)、鼻水・鼻づまり、のどの痛み、下痢・嘔吐、腹痛、頭痛、中耳炎、ひきつけ(けいれん)などの症状など多岐にわたる小児科一般の病気を診断・治療しています。
小児予防接種、乳幼児健診、お子様の諸症状でご心配の場合には、小児科専門医・アレルギー専門医・呼吸器専門医・総合内科専門医が在籍する当院へ気軽にご相談ください。
ご予約について
待ち時間状況、時間帯予約はこちら
(当日の時間帯でのご予約が可能です。直接のご来院も可能ですが、予約優先となります。)
小児科・アレルギー科・呼吸器内科・内科・院長ブログもよろしければご覧下さい。
その他よく読まれている記事は?
【小児科・アレルギー科】小児の気管支喘息(ぜんそく)について
花粉症対策ガイドページを公開致しました
患者様が花粉症対策の情報を探しやすいように、花粉症対策のガイドページを作成しました。役立つ情報もあると思いますので、是非ご覧ください。
咳・喘息のページを公開致しました
患者様が咳に関する情報を探しやすいように、咳や喘息のガイドページを作成しました。役立つ情報もあると思いますので、是非ご覧ください。
取材記事について
女医に訊く!2020年4月号
「アレルギーはどうして起こるの?花粉症対策」について、取材協力致しました。
日経DUAL 2020年 12月号
ママパパ向け年齢別記事 「保育園」
「注意したい子どもの3つのせき 特徴と受診目安は?」について、取材協力致しました。