黄砂・PM2.5と咳について
黄砂・PM2.5は花粉症と同じようなアレルギー症状を起こし、さらに花粉症を悪化させる原因にもなります。飛散量が多い日には車や洗濯物にも黄色くはっきりと黄砂がついているのがわかり、非常に厄介なものです。咳や喘息にも影響を与える黄砂・PM2.5は花粉と同様に警戒しなくてはいけません。
目次
1. 黄砂とは?
2. 黄砂と花粉の関係
3. PM2.5とは?
4. 黄砂とPM2.5が咳に及ぼす影響
5. 黄砂とPM2.5の対策
黄砂とは?
黄砂とは中国をはじめ東アジアのゴビ砂漠やタクラマカン砂漠などの砂漠地帯や、黄河流域の黄土が堆積した黄土地帯から発生する砂やちりのことです。黄砂は強風によって巻き上げられ日本などの周辺大陸まで偏西風に乗って飛散し黄砂現象を起こします。
黄砂が日本に影響を及ぼすのは毎年2月頃から春にかけて、花粉の時期と重なることが多いです。黄砂が発生する地域や強風の程度などによってその年の飛散量は変化します。日本では中国大陸に近い九州、西日本、北陸地方で多く観測されますが、飛散量が多いと空が黄褐色に曇るほど目で確認することができます。
黄砂は発生してからおよそ48時間で日本の上空にたどり着くとされています。数十μm以上の大きな粒子の黄砂はそのまま落下するのですが、1〜30μm以下の小さな粒子の黄砂は偏西風に乗って遠くまで飛ばされます。飛ばされる過程で黄砂は微生物の死骸や金属類を巻き込み、特に工業地帯を経由してくると汚染物質など様々なアレルギーを引き起こす有害物質を含んでいます。黄砂は昔から存在する自然現象ではあるのですが、近年の森林伐採や砂漠化といった人為的な要因によっても被害は増大しているといわれています。
黄砂と花粉の関係
花粉症のメカニズムとして、花粉の表面に付着したアレルゲン物質(Cry j1)、花粉内部にあるアレルゲン物質(Cry j2)、それらが体内に侵入することでアレルギー症状を引き起こします。花粉そのものは30μm程度の大きさなので、肺までたどり着くことはありません。ところがアレルゲン物質の大きさは1. 1μm以下ですので、呼吸器の奥深く、肺にまで到達してしまうのです。
花粉は自然に浮遊している状態で割れるのは20%程度と言われています。ところが黄砂や大気汚染物質などに接触すると80%も割れてしまうのです。また、黄砂はPM2.5など有害な化学物質を付着させているので、PM2.5の主成分である硫酸塩や硝酸塩などにより、花粉が破裂しやすくなることがわかっています。さらに最近の研究により、黄砂などに含まれたアレルゲン物質は、花粉のアレルゲン物質をさらに変化させ、より強力なアレルギー症状を引き起こす可能性があることもわかってきました。
今年のように花粉症が酷くなる原因には純粋な花粉量の増加というよりも、例年にない程の黄砂によって大量に破壊された花粉との相乗効果が考えられます。今までの花粉症の時の咳や喘息、呼吸器症状などがより悪化するため特に注意が必要です。
PM2.5とは?
PM2.5は「Particulate matter2.5」の略で、大気中に浮遊している2.5μm以下の微小な粒子、微小粒子状物質のことです。1μmは1㎜の1000分の1なので、髪の毛の太さや花粉と比べて遥かに小さい物質ということがわかります。PM2.5の主成分は炭素成分、硫酸塩、硝酸塩のほか、アンモニウム塩、ナトリウム、アルミニウム、ケイ素など様々な成分が含有されています。
PM2.5の発生源は、一次生成粒子と二次生成粒子に分けられます。一次生成粒子は、焼却炉やボイラーなどの煙を発生させる施設や、自動車、船、飛行機などの乗り物、火山灰など自然発生のものやタバコの煙なども含まれます。二次生成粒子は工場から発生される窒素酸化物や硫黄酸化物などの物質が大気中で化学反応を起こして生成されたものです。発生する地域や季節によってその素性は変動し、国内では例年冬から春先にかけてPM2.5の濃度が上昇されると報告されています。
黄砂とPM2.5が咳に及ぼす影響
黄砂もPM2.5もその粒子の細かさから、粒子が肺にまで入り込み、気管支などの呼吸器系や循環器系に影響を及ぼします。黄砂・PM2.5のアレルギー検査項目は現在はありませんが、花粉症ではないのに鼻水や咳、目のかゆみのようなアレルギー症状が起きる人は、黄砂・PM2.5の影響が考えられます。
花粉に黄砂・PM2.5が付着すると、含有されている化学物質によりアレルギー症状をより悪化させてしまいます。特に喘息や気管支炎、COPD(慢性閉塞性肺疾患)のある人は、呼吸器症状の悪化、肺機能の低下がみられます。
PM2.5の環境基準値として、環境省では「1年平均値が15㎍/㎥以下であり、1日平均値が35㎍/㎥以下であること」と定められています。ただし、呼吸器疾患のある方や高齢者、お子さんにとってはこれより低い基準値でも健康被害が出る可能性もあるとされています。
黄砂とPM2.5の対策
黄砂もPM2.5も花粉と同様に吸い込まない、体に付着させないことが重要です。ただし黄砂・PM2.5は花粉よりも粒子が小さいので通常のマスクでは完全に防ぐことは難しいです。最近ではPM2.5も防止するマスクが販売されているので、できるだけ細かい粒子を防ぐフィルターのついたマスクを選ぶと良いでしょう。メガネやゴーグル、帽子の着用をし、粒子が落ちやすいように衣類もツルツルとした生地のものを選びましょう。外出から帰った際には家に入る前に払い落とすことが大切です。部屋の換気も最低限の換気で済ませ、侵入してきた黄砂・PM2.5は拭き掃除で取り除くようにしましょう。花粉症の方や喘息を持っている方はお薬をきちんと飲み、咳やアレルギー症状が酷くならないようにコントロールする必要があります。
環境省や気象庁、お住いの自治体のホームページなどからリアルタイムで黄砂・PM2.5の飛散状況を調べることができます。濃度の基準値が超えている場合は不要な外出は避けることも大切です。
当クリニックではアレルギー専門医・呼吸器専門医・総合内科専門医が在籍しておりますので、患者様の検査結果や症状に合わせ、最適な薬の処方や治療方法の提案をさせていただきます。気になる症状がございましたら是非一度ご相談ください。
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