小児ぜん息とは?
ぜん息患者さんは日本国内でおよそ400万〜500万人といわれ、その数は年々増加傾向にあります。近年は成人してから発症するぜん息患者さんが増加したことで、ぜん息は子どもだけの病気ではないと認識が広まってきていますが、依然として0歳から15歳までに発症する小児ぜん息の患者数も多く、成人ぜん息同様年々増加傾向にあります。
目次
1・ぜん息とは?
ぜん息と聞くと咳がゼーゼー出て息苦しい、というイメージだと思いますが、そもそもぜん息とは体がどのような状態になっているのでしょうか。
ぜん息は正式には「気管支ぜん息」といわれ、アレルギーなどの原因により気道に炎症が起こっている状態のことです。気道とは鼻から肺に至る空気の通り道です。この気道のうち気管支が様々な外部からの刺激によって狭められて、喘鳴(ぜんめい)と呼ばれるヒューヒュー、ゼーゼーという呼吸音を伴い、呼吸困難や咳を繰り返す、いわゆる「ぜん息発作」を引き起こします。
ぜん息の厄介なところは、ぜん息発作が治まり、落ち着いている状態が長く継続しているから治っただろうと思っても、気道の炎症は続いていることです。生活環境の変化や体調の変化、アレルゲンの曝露などがきっかけとなって、再度発作を起こすことが多々あります。
気道が慢性的に炎症を起こしている状態なのに、咳が出なくなった、息苦しくなくなったと個人で判断して治療を中断される方が多くいらっしゃいます。発作が起きた時だけ薬を使うということを続けていると、リモデリングという気管支が狭まったまま元の状態に戻らなくなる現象が起こり、呼吸機能が低下してしまいます。ぜん息は気道の炎症が治るまで根気よく治療を続けていかなければなりません。そのためにも呼吸器専門医のもと適切な検査、診察を行い、治療方針に従って上手にコントロールしていく必要があります。
2・ぜん息の三大症状
ぜん息の症状の特徴として以下の3つが3大症状といわれています。
- ゼーゼーといった喘鳴が息をする時に喉や胸から聞こえる。
ただし乳幼児など小さいお子さんの場合は音がはっきりと聞こえないこともあるため、息苦しそうにしているかの確認が必要です。 - 息が苦しい、息を吐く時に苦しくなり息切れをする。
- 激しい咳が出る。特に明け方に酷くなり、咳で目がさめる。
3・小児ぜん息の特徴
0歳〜15歳までに発症するぜん息を小児ぜん息と言います。小児ぜん息は3歳頃までに約70%、6歳頃までに約80%が発症し、その後10歳から15歳頃までの思春期には症状が落ち着いていきますが、約30%の人が成人ぜん息へ移行するとされています。
小児ぜん息の約90%がダニやハウスダスト、花粉、カビ、食品、ペットの毛やフケなどのアレルギーの原因となる物質がきっかけとなって発症する「アトピー型」といわれるものです。親御さんや家族にアレルギー体質の方がいらっしゃる場合には特に発症しやすい傾向にあります。
成人ぜん息は慢性化しやすく治りにくいとされているのに対し、小児ぜん息は前述したように、中学生になる頃には約7割のお子さんは症状が治まってきますので、呼吸器専門医の指導のもと、ガイドラインに沿った適切な治療や生活環境の整備などをしっかりと行うことで、問題なく学校生活を過ごすことができます。特に年齢が低いお子さんのぜん息治療は難しいのですが、ご家族が協力して、早期に治療を開始し、根気よく継続させてコントロールしていくことが大切です。
4・小児ぜん息の原因
小児ぜん息の多くは「アトピー型」といわれる何かしらのアレルギー原因物質に接触することで起こります。しかしぜん息は気道に炎症が起きている状態なので、アレルギー原因物質以外でも、タバコの煙や冷たい空気、などちょっとした刺激が加わることで敏感に反応し、ぜん息発作を起こすことがあります。また、小児ぜん息はインフルエンザや風邪などウィルス感染をきっかけに発症することも非常に多くみられます。特に小さいお子さんの集団生活において感染症を万全に防ぐことは難しいと思いますが、あらかじめ予防接種をしたり、可能な範囲で風邪予防に努めることも大切です。
そのほか小児ぜん息は遺伝的な要因もありますが、ぜん息の親御さんのお子さんが必ずしもぜん息にかかるとは言えません。ぜん息そのものが遺伝するのではなく、親御さんのアレルギー体質が遺伝することで同じようにぜん息になるお子さんもいらっしゃいますが、環境によっては全く発症しないこともあります。このようにぜん息の原因は「遺伝因子」と「環境因子」の相互作用によって発症するといわれています。
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