肺がん
肺がんは、日本における主要な死因の一つであり、早期発見と適切な治療が重要です。
肺がんにはいろいろな種類があり、治療法も異なります。
がんとは
がんとは、遺伝子の突然変異によって生まれる死なない細胞(がん細胞)が、制御されずに増え続けて周囲の臓器を破壊したり、他の臓器へ移動して増え続けたりする病気です。「悪性腫瘍」とも呼ばれ、場所や部位、がん細胞の性質によって分類されます。
がん細胞は、細胞分裂の際に遺伝子にコピーミスが起こり、細胞分裂を繰り返し続けることで発生します。コピーミスを起こす原因として、タバコや化学物質、放射線などが挙げられます。また、健康な人の体でも1日5,000個ほどがん細胞が発生しますが、免疫細胞が退治できないと蓄積され塊=がんになります。
肺の細胞で異常増殖を起こすのが「肺がん」です。
肺がんは、大きく分けて非小細胞肺がん(NSCLC)と小細胞肺がん(SCLC)の2つのタイプに分類されます。
非小細胞肺がん(NSCLC)
日本では肺がん全体の約80%を占める主要なタイプです。さらに、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんに分類されます。
小細胞肺がん(SCLC)
肺がん全体の約20%を占めるタイプで、非常に進行が早く、診断時にはすでに転移していることが多いのが特徴です。喫煙との関連が非常に強く、予後が悪いため、早期発見が困難です。
肺がんの症状
初期の肺がんは無症状のことが多く、進行するにつれて以下のような症状が現れることがあります。
- 持続する咳
- 血痰
- 胸痛
- 息切れや呼吸困難
- 体重減少、疲労感
進行した肺がんでは、食欲不振や極端な体重減少が見られることがあります。
診断方法
肺がんの診断には、以下の検査が行われます。
胸部X線検査
肺の影を確認するために行われる基本的な検査です。
CTスキャン
X線よりも詳細な画像が得られ、がんの広がりや位置を正確に把握するために使用されます。
PET-CT
がん細胞の代謝活動を映し出すため、転移の有無や手術可能性を評価するのに役立ちます。
気管支鏡検査
肺内部を直接観察し、疑わしい部分から組織を採取して病理検査を行います。
肺がんのタイプと治療
【非小細胞肺がん】
非小細胞肺がん(NSCLC)は、肺がんの約80%を占める主要なタイプであり、3つの主要な亜型に分類されます。それぞれの亜型について、詳細に解説します。
非小細胞肺がん(NSCLC)の主な亜型
1. 腺がん(Adenocarcinoma)
特徴
腺がんは、日本において最も一般的な肺がんのタイプです。非喫煙者や女性にも多く見られます。肺の外側部分に発生し、ゆっくりと進行することが多いですが、遺伝子変異があったり、腫瘍の場所によっては急速に進行することもあります。
2. 扁平上皮がん(Squamous Cell Carcinoma)
特徴
扁平上皮がんは、喫煙者に多く見られるタイプで、気道の内壁(気管支)に発生します。他のがんに比べて進行が比較的遅く、男性に多く発症します。
3. 大細胞がん(Large Cell Carcinoma)
特徴
大細胞がんは、NSCLCの中で最も稀なタイプですが、進行が早く、診断時にはしばしば進行期に達しています。どの部位でも発生し得ますが、腫瘍は一般的に大きくなりやすいです。
【非小細胞肺がんの治療】
非小細胞肺がんの治療は、がんの進行度(ステージ)、患者の全身状態、がんの遺伝子変異などに応じて個別に計画されます。
手術
早期段階で発見された場合、手術による腫瘍の完全切除が目指されます。手術の範囲は、部分切除から全摘まで、がんの広がりによって異なります。
放射線療法
手術が難しい場合や、術後にがんが残った場合に使用されます。高精度の放射線技術が進化し、副作用を抑えつつ効果的な治療が可能になっています。
化学療法
がんの進行を抑えるため、手術後や進行がんに対して行われます。最近では、化学療法と免疫療法の併用が増えており、治療効果が高まっています。
分子標的治療
EGFR遺伝子変異やALK遺伝子再配列など、特定の遺伝子変異を持つがんに対して効果的な治療法です。遺伝子変異がある場合、従来の化学療法に比べて高い効果が期待されます。
免疫療法
免疫チェックポイント阻害薬などを使用し、患者自身の免疫システムを活性化してがん細胞と戦います。特に進行がんや再発がんに対して有望な治療法です。
【小細胞肺がんの特徴と治療】
小細胞肺がん(SCLC)は他のタイプの肺がんに比べて増殖が早く、再発しやすい傾向があります。限局型であっても、治療後の再発リスクが高いため、定期的な経過観察が重要です。
小細胞肺がんは、限局型であれば放射線療法と化学療法の併用が一般的です。進展型では、主に化学療法が用いられます。最近では、免疫療法も進展型の治療選択肢として注目されています。
肺がんのステージについて
ステージ(病期分類)は、がんの進行度や広がり具合を示すための重要な指標です。これにより、最適な治療方法や予後の見通しを立てることができます。以下に、肺がんのステージについて簡潔に説明します。
T:腫瘍の大きさや状態
N:リンパ節への広がり
M:他の臓器への転移
肺がんは主に以下のように4つのステージに分類されます。
病期 |
説明 |
5年生存率 |
---|---|---|
I期 |
がんが肺の一部に限局しており、リンパ節や他の臓器への広がりはありません。 |
約60-80% |
II期 |
がんが肺の一部に限局していますが、近くのリンパ節に転移している場合もあります。 |
約40-50% |
III期 |
がんが肺全体や周囲の組織に広がっており、遠くのリンパ節にも転移していることがあります。このステージはさらにIII AとIII Bに細分化されます。 |
約20-30% |
IV期 |
がんが肺以外の体の部分(例えば、骨、脳など)に広がっている状態です。 |
約2-10% |
小細胞肺がんは転移スピードが非常に早いため、以下の分類も用います。
1. 限局型
がんが片側の肺内に限局しており、周囲のリンパ節に転移している場合も含まれますが、胸部の片側に留まっています。この場合、がんは比較的治療がしやすく、手術や放射線療法、化学療法の効果が期待できることがあります。
2. 進展型
がんが片側の肺を超えて広がり、両肺や他の臓器(肝臓、骨、脳など)に転移している状態です。このステージでは、がんが広範囲にわたっているため、化学療法が主な治療法となり、放射線療法が併用されることもあります。
まとめ
肺がんの治療は多岐にわたりますが、亜型や患者の状態に応じた適切な治療戦略を立てることが重要です。定期的な検診が必要なのはもちろんですが、健診で異常がなくても急速に悪化する肺がんもありますので、疑わしい症状があれば早めに医療機関を受診することが推奨されます。